写真で日々綴る、不連続な手紙
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待ち合わせに少し遅れて行ってみると、
君は錆びたガードレールに所在なさげに腰かけていた。
わたしを見つけると、ゆっくりと立ち上がって、照れくさそうに近づいてくる。
わたしたちはお互いを見ながら数歩歩んで、触れそうな距離に近づくと、
そのまま1本の弧を描くようにその場から離れた。
いつまでこうしていられるかわからなかったから、
君の指の節々や手のひらの固さを確かめ、記憶しながら。
初めて手をつないだときに、手のつなぎ方が一緒だね、と喜んだけれど、
君は誰とどんな風に手をつないできたんだろう。
そして、わたしはどこかで誰かとこんな風に手をつないでいたということを、
そんな風に露呈してしまって、
ああ、あれは牽制だったんだ、と、少し後悔している。
後悔すべきことは、本当に山ほどあるのだが。
※テキストはフィクションです。
それは、突然現れた。
この、砂漠地帯に。
その建物は、入り口がひとつきり。
散歩しているときに見てみたら、入り口が開いていた。
思い切って入ってみたら、静かにドアがスライドしたので驚いた。
薄暗くてよくわからないが、どうもそれはエレベーターらしい。
小さなライトが少し遅れて点灯すると、安っぽいオレンジ色をしたカーペットや壁紙が見え、
真平らな電子音でビートルズが流れだした。
これ、北欧柄じゃん。
なんとなく安心して、上向きの矢印を押すと、ひゅうっと音がした。
おかしな浮遊感だ。
まっすぐ上がっていっているようで、ときどき曲がりくねった廊下を無理矢理通っていく感じがする。
チンという乾いた音と共に、頂上へ出た。
そこは周囲をガラス張りにした、日当たりのよいコロニーだった。
展望台のような感じだ。
窓へ寄っていって、景色を見ると、隣にも似たような緑色をしたコロニーが、…その隣にも、その隣にも。
本当のところ、コロニー以外には何もなかった。
このあたりは、やはり砂漠だった。
一通り眺めて満足すると、のどが渇いてきた。
そこで、自動販売機を探すことにした。
コロニーの中は、小さな部屋が規則正しく並んでおり、そこに見たことのない人々が忙しそうに出入りしていた。
そして、真平らなビートルズが流れていた。
緑色のエイリアンたちも、ビートルズが好きなんだろうか。
今ね、
蜜柑の花がたくさん咲いているの!
それ、すごくいい匂いなの!
朝、雨戸を開けたら匂ってきたんだ。
一嗅ぎで、幸せになっちゃうような、すごくいい匂いなんだ。
とくにね、早朝の冷たい湿気と一緒だと、本当にいいんだ。
個人的に楽しまれる以外に、お使いになりたいものがありましたら、contactなどから一言お願いいたします。